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プラスのマイナス

バロック音楽の楽譜でよく見かけるこの記号。

2012.11.23-1
(G.Ph.Telemann:Fantasy for flute solo No.2)

一体下の音符に何をプラスするの?って話だが、これは実はトリル(正確にはトリル的装飾)の記号である。
まあ、装飾記号なので、結局音をこれにプラスする事になるが(笑)、別にこれはそういう意味の+ではない。
トリル「trill」の「t」のことであり、後にもうちょっとわかりやすく「tr」となった。

それから200年の歳月が流れ…時は近代。今日はこちらの方に関する話。

今度は同じ「+」でも意味が違う。
2012.11.23-2
これはとあるフルート曲の楽譜。

この記号の正式な呼び名はないが、この曲ではフルートのキィを「ポン!」と叩く。いわゆる現代奏法。
つまり、「ミ」の音の上にこれがあったら、「ミ」の指で「ポン!」とやると「ミ」っぽい音程でフルートが「ポン!」と鳴る。
管楽器の特性を活かした効果音のひとつであろう。
尤も、あまり大きい音ではないので、一緒に軽く息を吹き入れたりする。

この奏法は特に現代音楽にのみ使われるわけではなく、普通の曲でも時と場合によっては便利な場合がある。

というのは…

今から丁度32年前の11月、故:アラン・マリオン先生のレッスンを受けた時の事。
2012.11.23-3

低音域の鋭いアタックでは、タンギングと同時にキィをポンと叩くとよい」と教わった。
なる程、低音の立ち上がりがとても鋭くなった。「これは使える」と、自分もそれから活用するようになったのだが…

ところが、これには2つ欠点がある。

ひとつは(もうお気付きだろうが)、楽器に良くないという事。タンポやトーンホールに、少なからずいちいちダメージが加わるだろう。
且つて自分の楽器の“主治医”だった故:江藤大二氏は「リペアマンとしては、現代音楽はなるべくボロい楽器で吹いてほしいよね」と笑って言っていた。それだけこの奏法が多いという事だ。

さてもうひとつはクセになるという事。こっちはわりと深刻である。というのは…

この「ポン!」と叩くのは、なにも全部のキィでなくともよく、例えば低音の「レ」なんかの場合、中指と薬指は予めもう押さえといて、右人差し指だけで叩けば効果充分。

すると次第にこの「叩き役」が単独で“暴走”し始め、現代音楽でなくても、低音域でなくても、鋭いアタックなんか関係のない箇所でも、いちいち(無意識に)ポンポンやり出すのだ。いや本当に。

実際、プロでもそういう奏者が何人かいる。聴いている方は次第にこれが耳障りになってくるのだ。

綺麗な曲なのに…。いうなれば「+」(プラス)奏法がもたらす「-」欠点(マイナス)といったところか。

ジェームズ・ゴールウェイ氏などは、従ってこの奏法を嫌っている。「キィは叩いてはいけない」と。
なる程そのご意見ももっともだと思う。

かくいう自分はどうなのか?



実は今日先程まで、藝大フィルの定期演奏会の本番だったのですが、という訳で何となく今日は自分で意識してチェックしてみました。

折しも今回の曲、ドボルザークの宗教曲「スターバト・マーテル」のフルートパートは、ことの外低音が多く、下のD〜H(B♭も!)が沢山出てきますが、そのシテュエーションは殆どがレガート。
クセになっている程叩いてはいませんでしたが、かといってはっきり閉じないとスラーが切れてしまいます。

そんな訳で、時と場合によってマリオン論とゴールウェイ論を使い分けていたようです(笑)。
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テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

tag : トリル プラス記号 現代奏法 マリオン ゴールウェイ ドボルザーク スターバト・マーテル

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プロフィール

Yumochan(ゆもとようじ)

Author:Yumochan(ゆもとようじ)
本名:湯本洋司
フルート&ピッコロ奏者。アレンジャー。
(属)芸大フィルハーモニア/アマデウス・クィンテット/ムラマツフルートレッスンセンター講師

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