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ヤマカズさんのマーラー9番

昨年夏、フォンテック社から故・山田一雄氏指揮、新日本フィルハーモニー交響楽団によるマーラーの交響曲第9番のライヴCDが発売されました。

2012.4.27-1

1986年6月7日、東京文化会館でのライブ録音ですが、実はこの本番、自分がエキストラで乗っていたのです。しかもピッコロで。

当時まだ学生だった自分に、どういう経緯でこんな大役が回ってきたかはあまり記憶にありませんが、とにかくこの公演、ご飯もろくに喉に通らない程のオーケストラの怖さを初めて味わった本番であったことは、今でも鮮明に憶えているのです。




自分はマーラーのファンではあるが、ピッコロ奏者の立場として言わせてもらえば、マーラーのピッコロの扱い方は最悪である。
必要な時に必要なだけ使い、後はお構いなし。完全な道具扱い。
人間が吹いているのだということを忘れてほしくなかった。

例えば…
★何十小節も(=何十分も)待たせた上に、PPで「ピー」と1発吹かせるなんてのはザラ。
★とてつもないハイトーンをノンブレスで吹かせる。しかも2人一緒にユニゾン(同じ音)で。
★フルート奏者全員が一瞬の間にピッコロに持ち替えて2小節だけユニゾンで吹かせる。でも結果的にあまり聞こえない。
★楽器の音域外の音が出てくる。上はともかく最低音よりも下の音が。楽器の事をよく知らないのか。

で、この9番の場合、チョコマカとソロが出てくるが、その1つひとつがそれはそれは厳しいシロモノで、ピッチ、音色、音楽性etc...いわば完璧なソルフェージュを要求されるものばかり。

更にさらに!プロオーケストラにはそれはそれは怖い管楽器奏者が揃っていて、当然若造がエキストラでやって来ると、もう”耳ダンボ”で聴いている状況。

もしピッチやテンポが狂ったりすると、身を乗り出して睨まれたりする。
飛び出したり落ちたり(←本来吹くべき所で吹かない事)しようものなら「おい!」とか「バカ野郎!」とか、何処からか声が飛んで来たり、蹴られたりする世界。

特に当時の新日フィルには、N響を定年退職されたHr.の故・C先生(←鬼)が在籍していて、アーチ上に配列されている管楽器セクションの反対側からは、氏がこっちをギロリと睨んでいるのがよく見えたものだ。

しかも2日目のリハーサルで、自分は同じ箇所を3度続けて失敗し、周りの顰蹙を買った(に違いない)。

だから帰宅してからも、もう必死だ。スコアを研究し、パート譜のコピーに沢山メモを書き入れ、カセットテープを何度も回して音源に合わせて練習したり。

リハーサルで指揮者にもし捕まったりしようものなら、「お前1人のせいでオケはこんなに待たされてんだぞ」的な視線を浴びたりして、もう生きた心地がしないが、幸いヤマカズ先生は気のイイ感じの方で、自分が捕まる事は1ぺんもなかった。

そういう意味では、まだ本番の方が安心だった。何かあっても取り敢えず止まらずに進むから(笑)

そして本番…。

第1楽章の難所は2ヶ所。後半1小節だけ出てくる複雑な動きのソロ。そして一番最後に伸ばす全音符。
第2楽章も2ヶ所。これも最後にコントラファゴットとのユニゾンでPP一発芸。
第3楽章は皆でワイワイガヤガヤという曲なので、比較的緊張度は低い。
第4楽章が最もヤバい!恐ろしく息の長いソロと、ヴァイオリンのPPに乗せる厳しい伸ばしが3発。

その箇所が近づく度に「来た来たッ、来たぞ~」という気持ちになり、じっと掌を見ると汗が滲み出て来るのが目に見えた。

でもまあ、練習と集中の甲斐あって、何とかどれもトチらずに本番を終える事ができた。
団員の方々にもねぎらいの言葉をかけられて、心底ホッとし、ヘナヘナと力が抜ける。

また、ヤマカズさんの唸るような棒と新日フィルのハイレヴェルな演奏の組み合わせで、この夜は大熱演となり、会場は大喝采であった…



…この本番が、忘れた頃になっていきなり再現された次第であります。
改めて聴いてみると、実に素晴らしいオケ。CD化されたのも納得です。
が…、つい「あ、この瞬間自分はドキドキしてるだろうな」という、変わった聴き方をしてしまうのでありました(笑)

あの時から26年。既にこの交響曲はもう何度も経験し、その度に勿論緊張はしますが、その対象が周囲の耳に対してではなく、曲そのものに対して、というように変化してきました。

そして、今や自分もその且つての「怖い管楽器の先輩奏者」と同じ位の年齢になりました。
自分ではアレ程怖くはないつもりですが…^_^;;)
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テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

tag : 山田一雄 新日本フィルハーモニー マーラー 交響曲第9番

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No title

誰よりも正確な音楽の自然なテンポ感、音の切り際、フルートの月夜のような音色(ねいろ)、なんと言ってもピッコロの世界一美しい音色。。。いつも感動しています。本当にありがとうございます!いよっ!湯本さん世界一!

因みに…

1st.Fl.はS尾氏1st.OboeはO畑氏という名手そろい踏みでした。

ひぃ~

読んでいるだけで手に汗握ってしまいました(笑)
名演ぜひ聴いてみたいです(*^_^*)
プロフィール

Yumochan(ゆもとようじ)

Author:Yumochan(ゆもとようじ)
本名:湯本洋司
フルート&ピッコロ奏者。アレンジャー。
(属)芸大フィルハーモニア/アマデウス・クィンテット/ムラマツフルートレッスンセンター講師

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