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ショートショート「珍トラ」

バレンタインの夜長、こんな全ッ然関係ないフィクション(作り話)は如何ですか?



ショートショート「珍トラ」

とあるオーケストラの演奏会。
プログラムはマーラーの交響曲第7番。
マーラーの交響曲は編成にせよ時間にせよ、どの曲もスケールが非常に大きく、声楽との共演や、珍しい打楽器からパイプオルガンまで、様々な楽器を取り入れる事にも特徴がある。
この第7番は歌は入らないが、第4楽章「夜の歌」でギターとマンドリンが1本づつ加わる珍しい編成。室内楽風の長閑な音楽…。

ところがこの日、そのマンドリン奏者が何らかのアクシデントに巻き込まれて出られなくなってしまった。
問題なのは、今日が2夜連続演奏会の2日目で、ゲネプロなしの本番のみという事。

オーケストラのマネージャーは困った。開演まであまり時間がなく、それまでにトラを立てなければ(←エキストラを入れること)ならないのだが、少なくともこの曲の経験者でないと代わりは務まらないぞ。どうしよう…。

その時マネージャーのところに、ある旧友から野暮用の電話がかかって来た。
彼はそれどころじゃない状況ながらも、ついそのマンドリンの話をしてしまう。
するとその旧友、何とこんな事を言った「なんだ、そんな事なら俺に任せとけ!俺の所にいるからすぐに調達してやる。何処に何時だ?」
何で音楽に全く関係のない職業のコイツがマンドリンの事を知っているんだ?と一抹の疑問がかすめながらも、背に腹は代えられず、まさに藁をもつかむ思いでマネージャーは「今晩7時開演、◯◯大ホール」と用件を告げ、奏者の名前を尋ねる。
「シュウ、タロウ」という名前を聞き、「渡りに船」と言わんばかりに取り敢えずホッとして電話を切るマネージャー。

そして開演が迫った。
1ベルが鳴り、オケの楽員は舞台袖からゾロゾロとステージへ。
代役のマンドリン奏者はまだ現れない。
マネージャーは焦りで汗が吹き出る。本当に来るのか?

そしてコンサートマスターを除く全楽員が着席したところで、遂にその「しゅう たろう」氏はやって来た。

マネージャーはてっきり「シュウ」が苗字(周とか?)で「タロウ(太郎)」が名前だと思っていた…が、登場したのは首に鎖を付けられた「シュウタロウ」という名のオスのマンドリルだった。

とある動物園の園長をしているその旧友は、騒音混じりの携帯電話で「マンドリン」を「マンドリル」と聞き間違え、自分の動物園から1匹連れて来たのであった。
唖然とするマネージャーを尻目にヒョイヒョイと出て行く猿。

かくして周囲の団員の奇異の目と、笑いをこらえた非常に危ない雰囲気の中、意外にも凄く大人しいシュウタロウ君は70分に渡る大曲の間、時折キョロキョロと辺りを見回したり、ffの時に聞こえない程度の奇声を発しながらも舞台上の所定の席に終始チョコンと座り続けて本番を終えたのである。

2012.2.14-1
公演は予想外に盛り上がった。
尚、この珍事にマネージャーは発狂したが、指揮者は全く気付いていなかった事を付け加えておこう。



いや、こんな事は絶対にあり得ないのですが、何年か前にこのマーラー7番に自分が出演した時、リハーサル初日にインスペクターが「明日の練習からギターとマンドリンが入ります」って言っていたのを、自分が「マンドリル」と聞き間違えて、独りほくそ笑んだ事から閃いた話です。

どうもお粗末様でしたm(__)m

(なお写真はあくまでもイメージであり、実際の被写体と本文は何の関係もございません)
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テーマ : 自作小説
ジャンル : 小説・文学

tag : ショートショート マーラー交響曲第7番 夜の歌 マンドリン マンドリル

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プロフィール

Yumochan(ゆもとようじ)

Author:Yumochan(ゆもとようじ)
本名:湯本洋司
フルート&ピッコロ奏者。アレンジャー。
(属)芸大フィルハーモニア/アマデウス・クィンテット/ムラマツフルートレッスンセンター講師

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