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グレの歌

年5回ある芸大フィルハーモニアの定期演奏会ですが、そのうち11月のシリーズは毎年声楽科の学生の皆さんと共演する「合唱定期」となっています。
昨日はその本番で、演目はベートーヴェンの「荘厳ミサ曲」でした。この曲は自分がオケに入団してから2回目ですが、1回目は1993年でしたから、もう18年ぶりという事になります。

これまでに、合唱定期ではマタイ受難曲、ヨハネ受難曲、ハイドンの「天地創造」、ベルディのレクィエム、ブラームスのドイツ・レクィエム、ブリテンの「戦争レクィエム」他、様々な宗教曲が演奏されてきましたが、中でも自分の記憶に最も印象深く残っているのが、1987年の「芸大100周年記念公演」シェーンベルク作曲「グレの歌」でした。
2011.11.19-1

現代音楽の先駆者ともいえるアルノルト・シェーンベルクがこの曲を完成したのは、今から100年前の1911年。
3つの部分から成り、演奏時間も1時間40分を越える大曲です。
第2部と第3部の作曲時期が10年も空いているので、その作風が違うのも特徴の1つといわれています。
詳しくは“ググって”みて下さい(笑)。




なんで「グレの歌」がこんなに思い出深いか?

理由その1…事故からの復活(?)

実はこの曲に乗ったのは、まだ自分が芸大フィルの団員ではなくて、大学院生だった頃。「オーケストラ実習」という科目の一環として、エキストラで参加していた。
自分は当初第1ピッコロ奏者を努める予定だった。
ところが、初練習の20日位前に何と交通事故に遭って顔を怪我してしまい、1週間程入院。
だが、一生に1度あるかないかというこの曲に是非乗りたいッという執念からか、意外と早く回復して奇跡的に初日に間に合ったという凄い経緯がある。


理由その2…とにかくもの凄い大編成。

オーケストラだけに限っていえば、マーラーの「千人の交響曲」をおそらく凌ぐ。
フルートだけでも8人必要。木管金管合わせて50パート!打楽器や弦楽器も普段の倍は必要の他、当然合唱も男声4部合唱が3隊+混声8部合唱という、もの凄い人数が必要で、公演はサントリーホールの舞台後方の客席が合唱用に埋め尽くされた。

2011.11.19-2

全員が演奏する部分のスコアは、もはや虫眼鏡なしでは読めない(1段の幅は2mm)。
歌のソリストも6人(1人はナレーション)、でもまあ指揮者は1人。
棒を振ったのは、今は亡き若杉弘氏。公演は大盛況のうちに終わった。


理由その3…”ピッコロ奏者泣かせ”な箇所がある。

このように千人近く出演者がいる訳だから、自分の役割なんてあってないようなものだろうと思いきや、とんでもない!胃の痛くなるような場面があるのだ。
自分は理由その1により第1から第3ピッコロに役を替えてもらったのだが、1も3も両方出てくる難所がこれ(矢印)、第3部「夏風の荒々しい狩り」の出だし。
2011.11.19-3


これはピアノでは一番右から2番目の鍵盤に相当する高音であるが、これをPP(ピアニッシモ)という最弱音でのばさねばならない。
そもそもこの音は、強く出す事すら当たりが不確実なのに、ましてやPPともなると、もはや風が吹くような音しか出ないのである。
だが書かれた音は出さねばならない。そこで、いろいろな対策がピッコロ奏者達の間で練られて来た。

[対策1] 1オクターブ下で演奏
これははっきりいって対策にはならない。書かれているのと違う音を出す事になるので。

[対策2] ホイッスル・トーンを出す
これは特殊な奏法で、すきま風みたいな音だが、楽器によって差異があり、また音程も不安定。
だが自分は結局この方法を使った。

[対策3] 別の楽器を使う
フィラデルフィア管弦楽団のピッコロ奏者:時任和夫氏は、この音だけの為の小さい縦笛を開発した。
長さ僅か5cm弱の金属製のリコーダーともいうべきか。
現在のところ、これが最も効果的で、他のオケからも「今度グレをやるので貸してくれ」というオファーがあるそうだ。



時任氏に初めてお会いしたのは、この本番からもう10年以上も経ってからでした。「グレ」の話になった際、この特殊笛の実物を見せて頂いた時には、ある意味ピッコロ奏者としての誇りが伝わり、感動したのを覚えております。
やはりこの笛から繰り出されるピアニッシモは、まさに「夏風」の吹く静寂な世界なのでしょう(←「とっておきのPPポイント」をご参照下さい)。

「グレの歌」またやりたいな~。
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テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

tag : 合唱定期 荘厳ミサ曲 シェーンベルク グレの歌 大編成 夏風の荒々しい狩り

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プロフィール

Yumochan(ゆもとようじ)

Author:Yumochan(ゆもとようじ)
本名:湯本洋司
フルート&ピッコロ奏者。アレンジャー。
(属)芸大フィルハーモニア/アマデウス・クィンテット/ムラマツフルートレッスンセンター講師

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